連続バンド小説 「俺はまだ速弾きができない」 第11話

『Change The World and Eye Point』

ポールダンスを初めて観たのは、旅行で友人とラスベガスを訪れたときだった。
LAから車で砂漠の闇の中を突き抜けた先に、突如不夜城のように現れたカジノ・シティが俺達を照らした。
カーラジオからはAC/DCが爆音で流れており、いやが上にも高まる期待感に、もしかしたら帰りはフェラーリ乗ってるかもな、などと軽口を叩き合ったりしていた。

数時間後、カジノでしこたまやられた俺達のライフはゼロだった。

何かこう、もっと楽しい気持ちになれることはないのかとバーで口少なに話し、そうだ、ショーパブに行こうじゃないかとなった。
負けが込んだ俺達の思考は完全におかしくなっていた。

それっぽいネオンサインが輝く店に俺達は突撃した。
どんなショーだったかあまり憶えていないけど、結果的にライフは回復した。
ポールダンスか…とそっと心のメモに記録した。

2016年、池袋

ライブハウスという、本来演奏をすべきはずの場に”ポール”というものが立っていることを俺達は即座に認識できず、行方にザワついていた。
しかし、寺社仏閣が当たり前にそこに在るような印象も受けていた。
訳も分からず、ショーが開始された。

総員女性で、和装で白塗りの、フォーキーで”キメ”たバンドだった。
曲調や世界観も最高に好みだったし、何よりポールに纏う彼女に釘付けだった。
鍛え抜かれたアスリートのようなイメージを持って、ステージに没頭していた。

演奏後、俺は意を決して、臆することなくポールの彼女に声をかけた。

「あ、あの、あの・・・」
「俺達のイベントに・・出てもらえませんかね・・・・・!?」

ちょっと声が裏返った。

彼女はクールに言った。

「リーダーに聞いてみますね」

答えは、ありありからの、”No”だった。

後日その理由を知るのだが、そのライブを持ってバンドが活動休止するためとのことだった。

どうしても彼女のステージが諦めきれない俺は、個人的に藍ちゃんに連絡を取り、なんと逆にバンドへの参加を依頼した。
この頃には、俺の突発的行動にメンバーも慣れたもので、あらいいじゃないというヘイポーさんのようなリアクションをするようになっていた。

一緒にステージに立つようになり、素晴らしいことだと思いながらも、唯一の懸念は彼女のステージをちゃんと見れないということであった。
そのため、藍ちゃん個人のショーがあるときは、花束を携えて彼女のステージを訪れる。
そしてその度、心の中にあるポールダンスのメモを更新するのだ。

僕が僕であるために。

(続く)


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