連続バンド小説 「俺はまだ速弾きができない」 第10話

『超高気圧ガール』

アルコールによる天啓により、

「ウグイス嬢が必要だ」

と、言ったときに、ほうじゅは、

「お前、頭大丈夫か?俺達はヘヴィメタル・・ましてや”スラッシュメタルバンド”なんだぞ!?」

と、返した。

俺は言った。

「OK…まずは自分の頭の片側に無い髪の心配をしろ。そして俺がこのバンドの”リーダー”だ。
すっ込んでろ」

ほうじゅはすっ込んだ。

そして自身の判断に従い、公募を開始した。

しかし、ウグイス嬢が簡単に見つかるだろうか、見つかったとしてもこのバンドでやってもらえるだろうか、ウグイス嬢は、そもそもウグイスとはどこにいるのだろうかと一晩悩み抜いた。

いや、見つからなかったとしても、思い出に昇華すればいいだけだ。
そう自分に言い聞かせつつ、早朝のPark(公園)で鳥の歌を聴いていた。

その夜、一人の女性がこの募集に興味を持っていると言う話を噂伝えに聞いた。

意外だった。
俺は彼女のことを知っていたからだ。

」という3ピースの鋭いパンクロックバンドで、彼女はギターを持って歌っていた。
と言うよりも叫んでいた。
異常なパフォーマンス性により、出禁(※)になったライブハウスもよくあると聞いていたので、反応に嬉しくありつつも少しビビっていた。

※出入り禁止になること

しかし、彼女がその特異なパートでステージングすることが不思議と腑に落ち、俺は、勇気を振り絞って彼女にコンタクトを取った。

「君の貴重な時間を、少しだけ俺達にくれないか」

「よろしくてよ」

ウグイス嬢の加入が、なんと即日で決まった。

直後に俺はあらゆる姓名判断の書籍を読み漁り、

彼女に、

『町田すみれ』

と、命名した。

俺は、「サクラ対戦」(※)では”神崎すみれ“が一番好きだったし、”町”にも”田”にも「すみれ」の花が咲いて欲しいと思った故だった。

※セガによる記録的セールスを達成したアドベンチャーゲーム

こちらの命名提示に対して、彼女は答えた。

「よろしくてよ」

伝説のウグイス嬢が生まれた瞬間に、俺達のアドレナリン・ダムは決壊寸前だった。

(続く)