連続バンド小説 「俺はまだ速弾きができない」 第12話

『IKKI Against the Machine』

2016年は、相次いでメンバーが3人加入した激動の年だったと顧みる。
“町田すみれ”、”藍”に次ぐ、「3rd Man」について今回は語る。

その当時に限らず俺はどうかしていて、バンドに常にイノベーション(革新)を求めていた。
何より会話に飢えており、スタジオでのリハーサルが終わると、とにかくメンバーと飲みたい”ブラックリーダー”と化していた。
だがメンバーは、明日仕事もあるし帰るよと、苦笑いで別れるのが常だった。
俺は別れた後、バカヤローと呟きながら、立ち寄ったスナックにて尾崎豊をノールック(※)で歌うことで、ぎりぎりアイデンティティを保てている状態だった。

※モニターを見ないこと

そんな状況の中、実現されたリハ後の稀有な飲み会で、FC(ファミコン)のタイトルである「いっき」の話になった。
“つぐもの”は実はゲーマーが多いので、自然と回顧し盛り上がったが、いつしか夜が深まると、話題は権力に一人立ち向かう独立系の「農民」がメンバーに必要ではないかというテーマにスライドしていた。

よくある酒席での馬鹿話が、熱と現実味を帯びてきた。

案に対し、バンドの良心であるヨーコ。先生が、

「いいと思う~」

と、言った。

俺は、

「本当か?」

と、念押しをした。

彼女は、

「いいと思う~~」と、

語尾を伸ばした。

俺は決断をした。

帰宅後、地球は揺れていたが、両手をなんとかキーボードのホームポジションに置いた。

指差し確認を怠らず、最後は夜のマジックに身を任せ、Enterキーを多目に叩いた。

『”いっき”パートを募集しています』

SNSへの投稿はダブったし、その夜は、悪い夢を見たように思う。

明くる日に、モニターの先の現実を見て軽い後悔をするも、それなりに大人になっていた俺は、すぐに忘れることができるだろうという確信があった。

しかしその夜、2件の応募があった。

俺は頭を抱えた。
何故なら、こんな募集に応募してくる奴は気が狂っているに決まっているからである。

相手を刺激しないよう、俺は各人に対して極めて丁寧に返事をした。
そこで一区切りをつけたつもりであった。できればここでやり取りが終わりますようにと。

意に反し、その夜、内1名から返信があった。

“上野”と名乗る男は、こちらの提示要件に対し、

「承知しました」

と言った。

承知されたことに俺は畏怖した。
こいつはマジでやってくると。

顔合わせの日、スタジオの重い防音扉が開かれ、竹槍が目に入った。
そして、互いに目が合った瞬間、爆笑と共に俺達はバンドに成ったのだ。

俺は彼に、”五寸釘”のファースト・ネームを与えた。

何を言っているのかわからない諸氏もいると思うが、「上野五寸釘」が、”農民”として、”世界”で初めてバンド界に君臨することが決定した日であった。

LED ZEPPELINでも成し得なかった、”いっき”パフォーマンスを携えたヘヴィメタルバンドが発足し、俺は期待と不安を両手からこぼし拾い集めていた。

(続く)