連続バンド小説 「俺はまだ速弾きができない」 第3話

『Band of the Night』

俺達はアルタ近くのカフェに同伴した。
武田(以降タケ)と名乗る男は終始笑顔で、俺は薄気味悪さを感じながら、METALLICAやシャコタン☆ブギの話をしたように思う。
偶然にも同学年だったことが幸いし、俺達はバンドを開始した。

後にタケは、

「マサキが”剛”(長渕剛)を聴いてなかったら一緒にバンドをやってなかった」

と、述懐する。
武田流の照れ隠しである。

ドラムが決まった。
こうなると事態の進行は速く、いつの間にか伝手でパンク上がりのベーシストの加入が決まっていた。
決起会にて、彼が聖飢魔IIが好きであったことから「和尚」と名前が決まった。
笑顔が眩しい奴だったが、普段はきわどくバイクで首都高を攻めているようだった。
そこには深く触れなかった。
俺達は遂にバンドに成った。
気分は最高潮だった。

週末はスタジオに入り、月一でライブをこなすようになった。
明るい未来だけを夢想したが、俺達には圧倒的にスキルがなかった。
ライブハウスのオーディションに出ては落ちを繰り返していた。
最初は物珍しさで来てくれていた友人達も、いつしか足が遠のいているようだった。

ライブ後にお客さんが、

「”もう”つぐものはいいかな」

と言うのがたまたま耳に入った。
俺達は飲んで荒れた。

また、とあるライブハウスに出演後、

「君たち音楽って”理解(わか)”ってる?」

と、スタッフに言われたりした。
俺は褒められて伸びるタイプだったのでブチ切れた。
ほうじゅは何時にも増してうつむき加減になり、ブツブツと何かを詠唱していた。
タケは一念発起したようでその後ひたすら2バスだけを練習していたが、俺は上物も練習して欲しかった。
和尚はやたらベースの弦高を気にしていた。

その頃、バンドの先行きの不安定さからか俺の奇行が目立ち始め、顔に靴墨を塗って街を歩いたりしていた。
そのナリでロックバーに行っては、当時そこで働いていたヨーコちゃんに愚痴めいた話ばかりしていた。
彼女は、

「そーなんですねー」

と、いう返事に徹した。
俺は癒やされた。

そして2年もしない内に限界がやってきた。
所謂バカヤロー解散である。

(続く)