連続バンド小説 「俺はまだ速弾きができない」 第6話

『”BEGIN” ~ 再生』

ヨーコちゃんは救急車で運ばれた。
ルームメイトからの逐一の安否報告に、俺達は感謝と惑いを繰り返しながら祈りを捧げた。
ほうじゅはワンカップを片手に震えていて使い物にならなかったし、俺は賛美歌を唱えた。
Gigのことなどどうでも良かった。

そして翌日

彼女は緩やかな風を纏いやってきた。
俺が医者ならば、決して退院を許さない局面であった。
線が細く美しさが先に立つが、ここ一番というところでの気合はメンバー随一だろう。
その燃えるような紅い髪と立ち上がりの強さから、影で”不死鳥”と命名する。

“2009年11月8日”

バンドは高円寺GEARにて新たなるスタートを切る。
信じられないかもしれないが、当時のメンバーは5人だった。

当時のことは余り覚えていないけど、俺達はバンドブーム世代で、メタルとゲームと長渕剛が好きだった。
つまり滅茶苦茶こじらせていた。
サウンドと嗜好の方向性は決定がつかず、常に会議は迷走を極めた。

ツインギターにしたいというのは元々の構想だった。
バンド仲間と散々朝まで飲んだ日にそいつはたまたま居て、ハードロックにあるあるを言いたいビッグマウス野郎だった。
男は”柴田”と名乗り、そういったギターを容易に弾けると豪語する。

「どうでもいいけどあんた”竹内力”に似てるね」
「そうかな」
「”RIKI”っつう名前でうちのバンドでギター弾かない?」
「おお」

この会話を5回程繰り返し、”RIKI”(※後の”ノーモアチャンス柴田”)が加入する運びとなる。
時点でサウンドを聴いたことはなかった。

後に”柴田”が最終的にボーカルに行き着く前に、前田敦子氏のバックバンドとしてベースを弾く。
成り行きの意味は全く分からなかったが、NHKスタジオでの頑張りはバンドの感動を呼んだ。
そのギャランティーで蛇柄のスーツを買うも、何か違うからと現在の来日スタイルに戻ることになる。

2010年の秋が深まり、バンドは独自の世界に入る。

(続く)