連続バンド小説 「俺はまだ速弾きができない」 第8話

『NYは今日も雨』

2012/01

俺達はバンド運営に完全に行き詰っていて、憔悴していた。
時点で顧客に対して、最高のサービスを提供できているかと言うと、答えは”No”だったからである。

今思うと、当時のバンドの問題は演奏力だったけど、何故か良い人材を加えることによって解決に向かうと思い込んでいて、それは後への増員へと繋がる。

あるライブ後に、俺は楽屋で堰(せき)を切った。

俺 「…これまでボーカルはほうじゅ一体制だったが、新たなるボーカルを迎えたい」
ほうじゅ 「…うむ」
皆 「…ザワ」

このとき、柴田は手洗いだかで居なかった気がする。
※大事な話の時、彼はよく不在にしがちである。

全員の承認が得られた。

俺は、ライブハウスで見かけてから、ずっと目を付けていた彼女(界隈通称: アキヲくん)に遂にオファーをした。

Masaki “Do you have a plan for join our band?”
Akiwo “Sure, why not?”

快諾と言って良かった。

“つぐもの”は、7人に成った。

一旦当時の体制を整理すると、以下の通りである。

Vo.ほうじゅ
Vo.アキヲ
Gt.マサキ
Gt.ノーモアチャンス柴田 ※現在はVoだが、このときはギターを担当していた。
Ba.ベースのセンさん
Key.ヨーコ。先生
Ds.ハプニング武田

彼女を迎えての初ライブは、下北沢シェルターだった。
あのヒロトやマーシーも立ったそこに自分がいる実感が持てず、浮かれていてステージがどうだったかあまり覚えがないけど、ほうじゅが放った言葉だけは良く覚えている。

「紹介します。真のボーカル、アキヲくんです!」

なんてプライドの無い良い奴だろうと思った。

「部長」の呼称は、自然と付いたものである。
彼女のような優しい人が部長だったらいいだろうなと皆思ったし、事実そうなっただけ。

俺達は再びロックを開始し、肩で風を切る感覚を思い出していた。

(続く)